昭和45年といえば、今から30年以上前になりますが、梅原猛氏が『芸術新潮』に古代史の謎に迫る大変興味深いエッセイを連載されました。
その中に仏教の塔をめぐる記事もあり、いまだに強く印象に残っております。例えば、塔は釈迦の骨を安置する場所であり寺院の中心を占めていたが、仏教思想の変化発展により寺院の中心は金堂に移り、塔は脇に押しやられることになった。
塔は、本来高さへの意志を表現するもので、権力の象徴でもあった。薬師寺の裳層のついた三重塔は、屋根を天武天皇、裳層を持統天皇の二重構造として建立されたものである、等々。
この時の印象がきっかけになったのか、寺めぐりをしても真っ先に三重塔や五重塔に目がいくようになりました。
塔の歴史や由来はともかく、天空に向かって垂直に立つ姿は周囲の自然と調和して、心を惹きつけてやまない美を醸し出しております。
日本全国には、約250もの三重塔や五重塔が現存するそうですが、これから興にまかせて訪ねてみたいと思っております。
【2005・1・5記】 |